法人が受け取る上場株式の配当金|益金不算入20%と源泉所得税の処理

上場株式やETFの配当金を個人の特定口座で受け取っているときは、証券会社が源泉徴収まで済ませてくれるので、こちらで何かをする必要はほとんどありません。ところが、同じ配当を法人で受け取ると、そこからが仕事の始まりです。

受け取った配当のうち何割を益金不算入にできるのか。源泉徴収された所得税をどうやって法人税から差し引くのか。その控除額をどう按分するのか。個人のときには存在しなかった判断が、決算のたびに発生します。

この記事では、本業のかたわら余剰資金で上場株式やETFを運用している法人を想定して、決算・申告で必要になる処理を、実際に手を動かす順番で整理します。

この記事でわかること

  • 法人が受け取る配当のうち、益金不算入にできる割合(区分は4つ)
  • 上場株式の運用なら、ほとんどが「非支配目的株式等」=20%になる理由
  • 源泉徴収された所得税を法人税から控除するしくみと、別表の書き忘れが致命傷になる理由
  • 元本所有期間の按分(原則法と簡便法)と、どちらが有利かの見分け方
  • 配当の直前・直後に売買すると益金不算入が消える「短期所有株式等」
  • freeeでの記帳のしかたと、個人の特定口座との作業量の違い

法人が受け取る配当は、2割しか益金不算入にならない

法人が他の法人から受け取る配当は、その一部または全部を益金に算入しない扱いができます(受取配当等の益金不算入)。配当の原資になった利益にはすでに法人税が課されているため、二重課税を調整する趣旨の制度です。

ただし、全額が課税されなくなるわけではありません。不算入にできる割合は、その株式をどれだけ持っているかで4つに分かれます。

区分保有割合益金不算入の割合負債利子の控除
完全子法人株式等100%全額なし
関連法人株式等3分の1超全額あり
その他の株式等5%超〜3分の1以下50%なし
非支配目的株式等5%以下20%なし

上場株式の運用なら、ほぼ「非支配目的株式等」

上場企業の発行済株式の5%を持とうとすれば、時価総額の小さい会社でも数億円規模の投資になります。余剰資金での運用であれば、まず該当しません。

つまり、受け取った配当のうち益金不算入にできるのは20%だけで、残りの80%はそのまま課税対象です。「法人なら配当は非課税」と考えていると、思っていたより税金が出ます。

そもそも益金不算入にできない(=全額課税される)分配金も結構あります

投資信託の分配金を、一律に益金不算入にしていませんか
  • 公社債投資信託の分配金 …… 対象外
  • 特別分配金(元本払戻金) …… 配当ではなく、取得価額を減らす処理
  • J-REIT(不動産投資法人)の分配金 …… 対象外
  • 外国法人からの配当 …… この制度の対象外(別に外国子会社配当の制度があります)

一方で例外もあります。信託財産を株式のみで運用する特定株式投資信託(国内株式型のETFなど)の収益分配金は、非支配目的株式等として20%の益金不算入の対象になります。同じ「ETF」でも、中身が株式なのか債券なのかで扱いが変わるところです。

源泉徴収された所得税は、法人税から引ける

上場株式の配当は、法人が受け取る場合も源泉徴収されます。税率は15.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%)です。個人と違い、住民税は差し引かれません。

この源泉徴収された所得税は、法人税の前払いのような性格のものなので、法人税額から差し引くことができます(所得税額控除)。控除しきれない金額は還付されます。

「引けない」より「引き忘れ」が問題

実務で目にするのは、源泉徴収された所得税をそのまま租税公課や支払手数料として処理してしまい、控除を受けていないケースです。赤字の会社でも戻ってくるお金なので、取りこぼすともったいない話になります。

書かなければ控除されない(ただし、あとから直せる)

「知らずに何年も取りこぼしていた」は取り返せます

所得税額控除は、申告書に控除を受ける金額とその計算明細を記載してはじめて適用されます。記載しなければ、源泉徴収された所得税は取られたままです。

ただし、当初の申告で書き忘れても取り返せます。平成23年度の税制改正で当初申告要件が廃止され、修正申告書や更正請求書に記載しても適用を受けられるようになりました。更正の請求ができるのは、原則として法定申告期限から5年以内です。受取配当等の益金不算入(別表八(一))も同じく当初申告要件が廃止されています。

控除するなら、別表四の加算とセットで

控除を受ける所得税額は損金になりません。別表四で加算する必要があります。別表六(一)だけ書いて別表四の加算を忘れると、税額控除と損金算入を二重に取った申告になってしまいます。どちらか片方だけ、という書き方はありません。

元本所有期間の按分 ── 原則法と簡便法

ここが、法人の配当処理でいちばん手間のかかるところです。

配当は、その計算期間(たとえば4月1日から翌年3月31日まで)の利益から支払われます。その期間の途中で買った株について、期間を通じて持っていた人と同じだけ控除を受けるのは筋が通りません。そこで、実際に持っていた期間に対応する部分だけを控除する、という考え方をとります。

項目按分の要否
株式・出資の配当必要
投資信託などの収益の分配必要
公社債の利子、預貯金の利子不要(全額を控除できる)

原則法

銘柄ごとに、配当計算期間のうち実際に持っていた月数で按分します。

控除額 = 源泉徴収された所得税額 × 所有期間の月数 ÷ 配当計算期間の月数
(1か月未満の端数は1か月に切り上げます)

簡便法

期首と期末の所有数だけで機械的に計算する方法です。

控除割合 = { 期首の数 +(期末の数 − 期首の数)× 一定割合 } ÷ 期末の数

  • 配当計算期間が1年以下のもの …… 一定割合は 2分の1
  • 配当計算期間が1年を超えるもの …… 一定割合は 12分の1
  • 期末の数が期首から増えていない場合 …… 控除割合は100%

どちらが有利かは、区分ごとに変わる

簡便法は、元本を「株式・出資」と「投資信託の受益権」に分け、さらにそれぞれを「配当計算期間が1年以下のもの」と「1年を超えるもの」に分けた、4つの区分ごとに選びます。区分の中では統一が必要で、銘柄ごとに有利なほうをつまみ食いすることはできません。

期中に買い増した銘柄が多い区分では簡便法が有利になりやすく、特に期末近くにまとまった数を取得した年は差が出ます。

この按分、去年の申告書をそのまま写していませんか。

銘柄の入れ替えがあった年は、原則法と簡便法で控除できる金額が変わります。今期の処理が合っているかどうかだけを確認する、単発の個別相談(WEB・1時間 22,000円/税込)を承っています。

買った直後に売ると、益金不算入が消える

配当の権利が確定する基準日の直前に買って、直後に売る。いわゆる「配当取り」です。これをそのままにしておくと、受け取った配当は益金不算入になるうえに、配当落ちで下がった株価での売却損は損金になり、二重に得をしてしまいます。

そこで、基準日以前1か月以内に取得し、かつ基準日後2か月以内に譲渡した株式に対応する配当は、益金不算入の対象から外されます。これを短期所有株式等といいます。

銘柄単位で判定されるので、意図せず該当する

配当をまたいで売買した銘柄はありませんか

この判定は銘柄単位で行われます。「基準日の前に買ったその株を売った」という個別の対応関係は必要なく、同じ銘柄でありさえすれば対象になります。配当取りのつもりがなくても、たまたま売買のタイミングが重なれば該当します。

また、この規定は保有割合の区分に関係なく適用されます。5%以下の非支配目的株式等でも同じです。

実務では、証券会社の取引報告書と各銘柄の配当基準日を突き合わせないと拾えません。売買のある期は、決算のたびに確認が必要になります。

freeeやマネーフォワードの記帳と、決算へのつなぎ方

freee会計やマネーフォワードで口座を同期していると、配当金は入金額(=源泉徴収された後の手取り額)で取り込まれます。そのまま「受取配当金」として登録してしまうと、源泉徴収された所得税が帳簿から消えてしまい、決算のときに控除の計算ができません。

手取りではなく、総額で記帳する

配当金10,000円、源泉徴収税額1,531円、入金額8,469円のケースでは、次のように分けて記帳します。

借方金額貸方金額
普通預金8,469受取配当金10,000
法人税、住民税及び事業税1,531

源泉徴収された分を「法人税、住民税及び事業税」(または仮払税金)で受けておくと、決算で別表に載せる金額がそのまま拾えます。

決算で困らない残し方

決算のときに必要になるのは、銘柄ごとの「配当金額」「源泉徴収税額」「配当計算期間」「その期間中の所有株数の増減」の4つです。取引の品目やメモタグに銘柄名を入れておくと、期末にまとめて集計できます。

特に配当計算期間は、証券会社の支払通知書には書かれていないことが多く、発行会社の決算期と中間配当の有無から判断する必要があります。中間配当のある会社は6か月、年1回配当の会社は1年が目安です。

個人の特定口座とは、毎期の作業量がここまで違う

項目個人(特定口座・源泉あり)法人
配当の課税源泉徴収で完結(申告不要も選べる)いったん益金に算入し、不算入額を計算する
源泉徴収された所得税精算済み別表六(一)で控除。按分の計算が必要
所有期間の把握不要銘柄ごとに必要
売買のタイミング気にしなくてよい短期所有株式等の判定がある
必要になる資料年間取引報告書別表八(一)、別表六(一)、別表四

「法人で運用したほうが得か」という損得の話とは別に、毎期これだけの作業が発生するということです。銘柄数が増えるほど、決算前にまとめて手をつけるのは難しくなります。

お受けしていないご依頼

当事務所では、法人の年1決算(決算・申告だけのご依頼)はお受けしていません。今の処理が合っているかどうかの確認だけであれば単発のオンライン個別相談、又は顧問契約をご検討ください。

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よくあるご質問

Q
配当が少額でも、別表は必要ですか。
A

金額の下限はありません。1銘柄・数千円の配当でも、益金不算入や所得税額控除を受けるのであれば、別表八(一)・別表六(一)への記載が必要です。逆にいえば、記載しなければ控除は受けられません。

Q
源泉徴収された所得税は還付されますか。
A

法人税額から控除しきれない金額は還付されます。赤字で法人税が出ない期でも、申告書に記載すれば戻ってきます。

Q
100%子会社からの配当は源泉徴収されないと聞きました。
A

令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当については、完全子法人株式等(計算期間を通じて100%保有)に係るものと、基準日に自己の名義で直接3分の1超を保有している株式に係るものは、源泉徴収が不要になりました。ただし、この記事で扱っている上場株式の運用では、通常どちらにも当てはまりません。

Q
ETFの分配金は益金不算入になりますか。
A

中身によります。信託財産を株式のみで運用する特定株式投資信託(国内株式型のETFなど)は非支配目的株式等として20%が対象になりますが、公社債投資信託やJ-REITの分配金は対象外です。

Q
証券会社の年間取引報告書だけで申告できますか。
A

足りないことが多いです。所得税額控除の按分には配当計算期間と期中の所有株数の増減が、短期所有株式等の判定には売買の日と配当基準日が必要で、いずれも報告書だけでは分からないことがあります。

まとめ

  • 上場株式やETFの配当は、法人で受け取ると原則20%しか益金不算入にならない
  • 源泉徴収された所得税は法人税から控除できる。ただし申告書に記載しなければ適用されない(書き漏らしても更正の請求で救える)
  • 控除を受けるなら、別表四での加算とセットで
  • 控除額は元本の所有期間で按分する。原則法と簡便法があり、区分ごとに有利不利が変わる
  • 配当をまたいで売買した銘柄は、短期所有株式等に当たらないかの確認が必要
  • 個人の特定口座と違い、これらが毎期の決算のたびに発生する

ひとつひとつは難しい計算ではありませんが、決算前にまとめてやろうとすると、資料がそろわずに手が止まります。記帳の段階で必要な情報を残しておけるかどうかで、決算の負担はかなり変わります。

株の処理まで含めて、毎期ひとりで回すのはしんどい。

当事務所では、freeeで自社で記帳していただきながら、判断が必要なところだけ税理士に相談する形をとっています。決算だけのご依頼はお受けしていませんが、期中から一緒に見ていく顧問契約でよければお手伝いできます。

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この記事は2026年9月時点の法令に基づいています。

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