電子帳簿保存法(電帳法)は、2022年以降に何度も改正があり、「結局なにをすればいいのか」がわかりにくい制度です。このページでは、中小企業・個人事業主のみなさまが実際に対応するうえで必要なことだけを、2026年9月時点のルールで整理しています。
結論からお伝えすると、中小企業者はさほど恐れなくて大丈夫です。ただし、令和9年(2027年)分からの改正で、早めに動いたほうがよい部分が出てきました。
このページでわかること
- 電帳法のうち、義務なのは「電子取引データの保存」だけであること
- 2年前の売上が5,000万円以下の場合に、最低限やること
- 5,000万円を超える場合に必要になる検索要件のつくり方
- 紙の領収書を捨てるための条件(スキャナ保存)
このページの目次
電帳法は3つに分かれます
電帳法は、次の3つの保存区分でできています。義務になっているのは③だけで、①と②は、やってもやらなくてもかまいません。
| 区分 | 対象になるもの | 義務/任意 |
|---|---|---|
| ①電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・決算書 | 任意 |
| ②スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書 | 任意 |
| ③電子取引データ保存 | データでやりとりした請求書・領収書 | 義務 |
紙で受け取った請求書や領収書は、紙のまま保存していれば何の問題もありません。「すべてをデータ化しなければいけない」というのは誤解です。
データはデータのまま保存する。ひとまずこれを守りましょう!
特に問題になるのはこの2パターンです。
①PCを買い替えたからそれ以前のデータは残っていない
②〇〇のサイトアカウントに入れなくなって過去のデータが取れない
義務なのは「電子取引」だけ
電子取引とは、紙ではなくデータでやりとりした取引情報のことです。たとえば次のようなものです。
- メールに添付されて届いた請求書・領収書のPDF
- Web上のマイページからダウンロードした領収書(ECサイト、携帯電話、電気・ガスなど)
- クラウド請求書サービスで受け取った請求書
- クレジットカードやネットバンキングの利用明細データ
- eBayやAmazonなどのプラットフォームから取得した売上・手数料のデータ
これらは、2024年1月以降、データのまま保存することが義務づけられています。紙に印刷したあとで元のデータを削除してしまうのは、NGです。
売上5,000万円以下(基準期間の売上)の方はこれ!
まず、規模にかかわらず共通することが3つあります。
- 受け取った(送った)データを、そのまま消さずに保存すること
- パソコン・ディスプレイ・プリンタ・会計ソフト等を備えておくこと
- 保存期間は7年。法人で欠損金の繰越がある事業年度は10年
そのうえで、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下であれば、やることは実質2つだけです。
パソコンの決まったフォルダでも、クラウドストレージでも、クラウド会計のファイル保管機能でもかまいません。大切なのは「消さないこと」と「あとで出せること」です。
データを勝手に訂正・削除しません、というルールを決めた書面です。国税庁がWordのサンプルを公開していますので、事務所名などを入れて保管しておけば足ります。訂正・削除の履歴が残るシステムに電子データを保存している場合は、この規程は不要です。
基準期間が5000万以下の場合は、検索性の要件(ファイル名を整える必要も、検索用の一覧表をつくるなど)を満たす必要もありません(税務調査でデータのダウンロードに応じることが前提です)。開業・設立から間がなく基準期間がない場合(設立2年以内)も、原則こちらに当てはまります。
売上5,000万円超の場合にやること
上の内容に加えて、「日付・金額・取引先」で検索できる状態にしておく必要があります。方法は、次のどれか1つで足ります。
- ファイル名をそろえる(例:20260912_〇〇商事_110000.pdf)
- 索引簿をつくる(日付・金額・取引先とファイル名をExcelで一覧にする)
- 検索機能のあるシステムを使う(クラウド会計のファイル保管機能や証憑管理サービス)
売上規模にかかわらず、出力した書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる状態にしてあれば、検索要件は不要になります。紙のファイリングがすでに定着している歴史のある会社では、こちらも現実的かと(もちろん、データ自体も消さずに残しておく必要があります)。
間に合わないときの「猶予措置」
上のルールに対応するのが難しい場合でも、次の2つを満たしていれば、改ざん防止の措置も検索要件も不要になります。
- 対応できない相当の理由があること(人手が足りない、システムの整備が間に合わない、資金的に難しい など)
- 税務調査のときに、データのダウンロードと、出力した書面の提示・提出の両方に応じられること
事前の申請や届出は必要ありません。この猶予措置には期限がなく、恒久的な措置として設けられていますので、焦ってシステムを入れ替える必要はありません。
猶予措置は「保存の要件をゆるめる」制度であって、「データを保存しなくてよい」制度ではありません。印刷したあとに元のPDFデータを削除してしまうと、猶予措置を使っていても要件を満たさないことになります。
2022年1月から2023年12月までの2年間は、やむを得ない事情があれば紙に出力して保存するだけでよい、という宥恕措置がありました。これは2023年末で終了しています。いま使えるのは、上で説明した猶予措置です。名前は似ていますが、データの保存が必要かどうかという点で中身が違いますので、ご注意ください。
紙の領収書を捨てて徹底的にペーパーレス化したい方向け
こちらは義務ではなく任意の制度です。
紙で受け取った領収書などは、スキャナ保存の要件を満たしていれば破棄してかまいません。事前の届出や税務署の承認も不要です(過去に受け取った分をまとめて電子化する場合だけ、適用届出書の事前提出が必要になります)。
ただし、「写真を撮ればよい」というものではなく、現在も次の要件があります。
- 入力期限:受領後おおむね7営業日以内。または業務処理サイクル後に速やかに(最長2か月+おおむね7営業日以内。この場合は各事務の処理規程を定めておくことが条件です)
- 解像度200dpi以上、かつカラー(赤・緑・青それぞれ256階調以上)。領収書は重要書類にあたるため、白黒やグレースケールは認められません
- タイムスタンプの付与。ただし、訂正・削除ができない(または履歴が残る)システムに期限内に格納すれば不要です
- 訂正・削除の事実と内容を確認できること
- 帳簿のどの仕訳に対応する領収書かを、相互に確認できるようにしておくこと
- 14インチ以上のカラーディスプレイとプリンタ、システムの概要書等を備えること
- 日付・金額・取引先で検索できること
なお、2024年以降、入力した人に関する情報を確認できるようにする要件や、解像度・階調などの情報を保存する要件は廃止されました。少しずつ楽にはなっています。
現実的には、これらをフォルダとExcelだけで満たすのは難しいので、JIIMA認証を受けた会計ソフトや経費精算アプリを使うことが前提になります。逆に、対応ソフトを使えば、ほとんど自動で要件を満たせます。
ちなみに、税理士であるわたしは、一応捨てずに残しています。。。紙のまま保存しておけば、そもそもスキャナ保存の要件を気にする必要がありません。
よくある質問
いいえ。紙で受け取ったものは、紙のまま保存していただいて問題ありません。義務になっているのは、データで受け取ったものをデータのまま保存することだけです。
印刷すること自体は問題ありませんが、元のデータも消さずに残しておく必要があります。紙だけを残してデータを削除してしまうと、要件を満たさないことになります。
いいえ。消費税法上の保存義務は電帳法とは別に定められており、電子取引データについては書面に出力して保存する方法も認められています。電帳法の要件を満たしていないことだけを理由に、仕入税額控除が否認されるわけではありません。
国税庁は、電帳法への対応が不十分であることだけをもって直ちに青色申告の承認を取り消すことはない、としています。過度に心配される必要はないかと思います。
多くの中小企業では必要ありません。電子取引データの保存だけであれば、フォルダでの保管と事務処理規程で足ります。導入を検討する価値があるのは、紙の領収書を捨てたい場合(スキャナ保存)と、令和9年分から75万円の青色申告特別控除を狙う場合です。
freeeやマネーフォワードのファイル保管機能に証憑を取り込み、仕訳と紐づけておけば、電子取引の保存要件はおおむね満たせます。ただし、設定や運用のしかたによって変わりますので、一度ご確認されることをおすすめします。
まとめ
電帳法について検索すると、会計ソフトや電帳法対応サービスを提供しているメーカーのページが多く出てきますが、上記のような猶予措置もありますので、焦ってシステム対応をする必要はありません。
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この記事は2026年9月時点の法令に基づいています。制度は改正されることがありますので、実際の対応の際は最新の情報をご確認ください。

