Archive for the ‘国際税務’ Category

海外転勤になった場合の確定申告はどうすればいい?

2024-05-28

海外転勤になった場合、一般的には住所も海外に移すと思いますが、日本での確定申告は必要なのでしょうか? 税理士がわかりやすく解説します。

1.海外転勤になったらどうなる?

海外に住民票をうつすと、一般的に「非居住者」になります(厳密には日本に滞在する期間が1年を超えると非居住者になります)。

「非居住者」は原則として、「国内源泉所得」だけを日本で申告することになります(例外として、その国と租税条約が結ばれており、国内源泉所得までも減免・非課税となる場合もあります)

日本国籍をもつ居住者の場合は、基本的に全世界すべての所得を日本で申告したうえで、海外で納税された税金は控除する仕組みなのですが、そもそも国内に住所がない「非居住者」の場合は、国内源泉所得が生じる場合のみ課税されます。

2.国内源泉所得ってどんなもの?

主なものを紹介します。

①日本出張期間に対応する給与が支払われた場合

 例えば、海外赴任中に、一時的に日本に帰国(出張)して日本で勤務した期間に対応する給与は、日本で課税されます(具体的には、国内払給与は会社が源泉徴収し、国外払の場合は居住者が翌年準確定申告をします)。

 ただし、多くの租税条約では短期滞在者免税規程(いわゆる183日ルール)というのがあり、この期間内であれば国外払給与は免税になります。赴任の方がよく気にされている183日ルールというのは、これを超えると日本で所得税が発生するということですね。

◆役員の場合は注意◆
日本法人の役員が海外赴任して非居住者となる場合は、たとえ海外勤務に対する報酬であっても20.42%の税率で源泉徴収が必要になります。この点、従業員が、国内勤務に対応する部分のみ課税されるのと異なりますので、注意が必要です。

②国内の資産を運用・売却した場合

日本にある自分の住宅を賃貸に出している場合や、日本国内の土地を売却した場合は、日本で確定申告が必要です。

③生命保険を解約したとき

日本で資産運用されていたため、国内源泉所得に該当します。ただし一時所得は50万円特別控除等があるため、かかる税金はさほどおおきくならないことが多いです。

その他、「国内源泉所得」の一覧は下記国税庁サイトもご参考ください。
国税庁:「国内源泉所得の範囲」

3.確定申告はどうする?

便利なE-taxソフトというのがありますが、非居住者はこのオンライン申告を使えません(そもそも住民票を抜くとマイナンバーカード自体も返却する必要があるようです)。

一般的には、国内に住所がある方や税理士を「納税管理人」として確定申告を依頼する形になります。

オフショア法人で節税?!(海外に法人を作った場合に気を付けるポイントを税理士がわかりやすく解説)

2024-05-22

「日本は税率高いからもったいない!」「ドバイなら税金かからない!」といった意見は良く聞きますが、今回は、海外法人で節税する仕組みや注意点を解説します。

1.海外法人(オフショア法人)は税金がお得?

海外との取引が多い事業や、また必ずしも国内の事業所が必要でない場合、「いっそのこと海外法人を設立しようか?」と考えることもあるかと思います。

特に、ケイマン諸島、バハマ、香港、シンガポールあたりは税金が極めて低く、海外法人の設立を検討される方も少なくありません。

2.海外法人のメリット

海外で法人口座が開設でき、海外との取引がスムーズになる

海外で法人口座が開設できるので、海外との取引において信頼性が高まるのと同時に、早期による手数料や為替リスクの問題から解放されます。

節税できる(税率が低い)

日本はアジア諸外国や中東と比べて税率が高いので、税率の低い国や規制の緩い国に法人を設立してみようか、と考えることもあるかと思います。日本は実効税率が23%~44%程度ありますが、海外の一部地域は外資誘致のため、非課税または低税率になっていることがあります

3.日本で課税されるケースもあります

①タックスヘイブン対策税制が適用されると、日本で課税されます!

タックスヘイブン対策税制とは、簡単にいうと、「低税率国に設立したペーパーカンパニーや経済実態のない会社の所得は、日本の親会社(又は株主)の所得に合算される」制度です

この税制が適用されてしまうと、低税率国に会社を設立しても、結局日本の所得として課税されるため、まったく節税にはなりません。タックスヘイブン対策税制が適用されるかどうかは細かい要件がありますが、特に気を付けるのは、

◆税率が20%未満の国で
◆経済活動基準の4つのどれかを満たさない
と、海外法人の所得すべてが日本の親会社(又は株主)側に合算されてしまいます。

経済活動基準の4つは以下の表です。具体的に残しておくべき書類もあわせて確認してみましょう。

 内容証明書類
A 事業基準主たる事業が株式の保有やライセンス供与でない 
B 実態基準本店所在地国に事業に必要な事務所等がある・固定施設の売買契約書、賃貸借契約書 ・シフト表や日報等人的活動を示す書類
C 管理支配基準本店所在地国で事業の管理、支配、および運営を自ら行っている・本店所在地国で開催した株主総会議事録
D 所在地国基準(卸売業等は非関連者基準)本店所在地国で事業を行っていること(卸売業等は主として関連者以外と取引を行っている) 

 引用:財務省 国際課税説明資料 https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen21kai1.pdf

②日本でPE活動と認定されると、日本で申告・納税が必要です!

海外法人であっても、日本でPE(支店)をもつと、PEに帰属する所得は日本で課税されます。
いわゆる「PEなければ課税なし」という原則ですね。
PEとはpermanent establishmentのことで事業を行う一定の場所のことです。

PEに認定されるかどうかは、各国との租税条約の内容によって異なりますが、一般的には、①支店PE、②建設PE、③代理人PEの3種類があり、そこで事業を行い収益を生み出しているかが判断基準になります。

PEから生まれる所得は、日本で申告する必要があります
以前、Amazonの日本倉庫が支店PE認定されたニュースもありましたね。


まとめ

今回は、海外法人を作る場合も注意点を解説しました。
節税目的のオフショア法人やペーパーカンパニー、実際の活動拠点は日本というケースには、日本の税務署も目を光らせていますので、甘い話にはご注意を!

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