Archive for the ‘確定申告’ Category

突然「個人事業税」の納付書がきた!これってなに?!

2024-09-07

確定申告書が終わって、ずいぶん経ったのに、8月ごろ突然「個人事業税」の納付書が届いて、なにこれ?!とびっくりされる方もいるかと思います。個人事業税は、正しく処理すれば実は節税にもなります。

1.個人事業税ってな~に?

「事業所得が290万円を超え、法定業種を営む個人事業主」に課税される税金です。
ほとんどの職種はこの70種の中に含まれていますが、一部の職種(作家、漫画家、システムエンジニアなど)は含まれていません。

(所得額-事業主控除290万円)×税率=個人事業税額で、税率は大半の業種が5%(一部3%、4%)です。

事業税には、青色申告控除の制度はありませんので、青色申告特別控除(10万、55万、65万)を所得額に足し戻して計算されます。

2.ずっと確定申告していたのに突然今年になって納付書が届いたのはなぜ?

個人事業主全員が事業税を払う必要はなく、年間の所得金額が290万円を超えると個人事業税が課税されます。
これまで事業税の納付書が届かったのは、所得が290万円以下だったからで、所得がだんだん増えてくると、ある年に突然個人事業税の納税義務が生じるのです!

3.実は若干グレーゾーンな個人事業税…

個人事業税は、各都道府県税事務所ごとに対応にバラツキがあると言われています。
法定業種は法律で決まっており、ライターやプログラマー、システムエンジニア、画家など、70業種に当てはまらない事業者は、個人事業税を納める必要はありませんが、実際の業種の判定は事務所や職員によって異なるようです。

特に初年度は都道府県から、「お仕事の内容についてのお尋ね」が来るケースがあり、実態を考慮のうえ、70種類の業種に当てはまるか判定されます。

私のこれまでの経験上、システムエンジニアは、「お仕事の内容についてのお尋ね」が来ることが多く、請負業に該当するのか、企業常駐型(準委任契約)なのか、契約条件や実態をヒアリングの上、課税対象かどうか判断しているようです。請負業に該当すると判断されると課税されますので、都道府県事務所の判断に疑問が生じる場合は、根拠を確認するとよいでしょう。

4.払った事業税は、経費になります!

個人事業税は経費として計上できますので、「租税公課」の科目を使って処理しましょう。

事業税と異なり、所得税や住民税は経費になりませんのでご注意を!

IT業界の税務の落とし穴

2024-08-23

ビスカスさんのサイトで「IT業界に強い税理士」として紹介いただきました!

特にIT業界の申告では、法人税・所得税だけではなく、消費税・個人事業税の負担が大きくなりがちですので、IT業界に強い税理士にぜひ相談しましょう。

https://www.all-senmonka.jp/guide/96806

こんな税理士はイヤだ~TOP3

2024-08-16

私は税理士になる前は、企業の経理部として、税理士さんと接する側でしたが、会社側の人間として「もうこんな税理士はイヤ~!」と思ったTOP3を挙げてみます。

第3位 高圧的な人

高圧的な人と話すだけで緊張してドキドキしますし、「こんな初歩的な質問していいんだろうか」「怒られないだろうか」と緊張して、本当に聞きたいことが聞けません。
私も、怖いお医者さんに会うと、いつも「本当はこういうことも気になるんだけど、聞いていいのかな…」という疑問を残して診療室を後にします。

税理士は専門家ですから、初歩的な質問大歓迎!
むしろ、わからないままで経営判断していくのはとっても残念です。

第2位 相談してもなかなかレスポンスがない人

お金や経理の困りごとはすぐに解消して、経営や本業に集中したいものです。相談したときにすぐにレスポンスがもらえると、すぐに困りごとを解消して迅速な意思決定ができます。

第1位 教科書・法令どおりのコピペで回答してくる人

税理士としては、リスクや責任を回避するうえで、法令どおりの回答をする気持ちもわからないではないですが、経理の専門家でない人間としては、「わかりやすく言うと結局どうなの?」「一番のポイントはどこなの?」ということもわからず、とても困ってしまいます。
当事務所は、「リスクも含めて、内容をわかりやすく説明し、お客さんにメリットデメリットを理解してもらったうえで選んでもらうこと」を大切にしています。

あなたの芸人としての収入が少なすぎて、我々はあなたを芸人と認めません…

2024-08-07

6月25日のYahoo!ニュースで、
「『大悟の芸人領収書(日本テレビ)』のなかで、芸人が税務調査をうけて、あなたの芸人としての収入が少なすぎて我々はあなたを芸人とは認めませんと言われた」という記事が掲載されていました。https://news.yahoo.co.jp/articles/8bc506da0999bf9b69083a4e72298fe6c6cf4647


なぜ税務調査で芸人を認めるかどうかの話になるの?!と不思議に思われたかと思いますが、実は【本業の収入なのかどうか】というのは税務調査の重要な論点です。
今日は、それをまじめに解説してみたいと思います。

1.本業なら事業所得、副業なら雑所得

ニュースのなかで税務調査官が、「芸人と認めません」といったのは、つまり、「芸人を本業として事業所得して申告していますが、芸人で生計が成り立っていないので、到底本業とは認められません、雑所得として申告しなおしなさい」ということです。

原則として、本業なら事業所得として申告し、副業なら事業所得として申告する必要があるため、このように税務調査で指摘されたのだと思います。

一見、事業所得として申告しようが、雑所得として申告しようがあまり変わらない気がしますが、なぜこのような違いがあるのでしょうか?

2.事業所得なら、なにがお得?

①ほかの所得(給与所得等)と損益通算できる

 事業所得の赤字は、給与所得などと損益通算できます。
 この芸人さんはアルバイトで年間200万円ほど収入を得ている一方、芸人としてはほとんど収入がなく(年間3万円‼)、コント道具やらなんやら経費はいろいろかかるので、芸人としては大赤字だったのだと思われます。このような場合、給与所得の黒字と、芸人としての事業所得の赤字を通算して申告していたため、目を付けられたわけです。

★なぜ雑所得(副業)はほかの所得と通算できない?
もしなんでもかんでもほかの所得と通算できることになってしまうと、どうなるでしょうか?
例えば、ほとんどお笑いライブなどの活動もしていないけど「ネタを書いているから芸人です」と言ってしまえば、自分の買ったお笑いライブのDVDやコント用の変装道具等あらゆるものを経費として落とす人もでてくるかもしれません。
ですので、税務署としては「本業としてその人が全力で取り組んでいる事業で赤字が出た場合には、特別にほかの所得と通算してあげるけど、片手間・小遣い稼ぎ程度にやっている副業で赤字が出てもそれは認めませんよ」というルールにしているわけです。

②青色申告の特典を受けられる

 青色申告65万円控除、30万円の少額減価償却資産の特例、専従者給与、純損失の3年繰越など、様々な青色申告の特典を受けることができます。
 雑所得の場合は、このような特典を受けられないことに加え、事業所得(青色申告)と異なり家事関連費(プライベートと事業共通する費用)を経費として計上できるハードルが高い(原則として事業割合が50%を超えないものは計上できない)ため、経費にできる範囲が事業所得より狭くなることがあります。

3.本業か副業かは、どう判断するの?

さて、この事業所得(本業)か、雑所得(副業)の判断は実はよく税務調査で揉める点です。
これまでは「実質判断」するしかなかったのですが、判断が難しすぎるという声をうけて、2022年改正されて年収の金額も判断要素の一つになりました。

 ※出展:国税庁資料より抜粋https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf

結論としては
・きちんと記帳をしていれば事業所得でOK
・年間収入が300万円超あれば事業所得としてOK

ただ、これはあくまで原則であって、帳簿を保存していたとしても、
①所得の収入金額が僅少(メインの収入の10%未満)
②所得が例年赤字続きで、その赤字の解消努力が見られない
ような場合は雑所得とすることとしています。

この芸人さんの場合は、調査官が芸人ライブに実際に見に行き、「全くウケていなかったです。でも最後まで汗を流してネタをやる姿。我々税務署は、あなたを芸人と認めます」と言われ、本業(事業所得)として認められたそうです。
この芸人さんは、年収3万円で、アルバイト収入からみてもかなり金額僅少ですので、形式的なルールからすると雑所得として税務署が判断してもおかしくはないと思います。

ただ、実は、過去の裁判例では、「その事業に時間的・精神的に力を注いでいるか」ということも一つの大きな判断要素でした。今回は、税務調査官が、わざわざライブまで見に行って、その芸人さんが片手間ではなく、全力で芸人の仕事をしていると認めたのだと思います。(記事を読んでウルっときたのは私だけ?笑)

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