ややこしすぎる年収の壁をひとことで語るシリーズ

パートやアルバイトをしていると、よく耳にする「○○万円の壁」。
「どこまで働いたら損するの?」「結局どの壁がいちばん大事?」と混乱している方も多いと思います。

今回はThreadsで反響の大きかった「ややこしすぎる壁を一言で語るシリーズ」を、
今回は少し丁寧に解説していきます。
(※制度は随時改正されるため、2025年10月時点の情報です)

106万円の壁:社会保険の加入ライン

自分自身が社会保険に加入するよ

勤務先が従業員51人以上の会社の場合、
年収が106万円を超えると、扶養から外れて社会保険加入することになります。

厳密には106万の壁というルールはなく、
週20時間以上かつ月収見込みが88,000円以上の場合です。

2025年に成立した年金改革法では
今後は金額要件は撤廃され、週20時間以上働く場合には一律加入となる見込みです。

この壁は会社にとっては「社会保険に加入しないといけない(=負担が増える)」という壁ですが
従業員にとっては必ずしも悪い話ではありません。

加入すると手取りは一時的に減りますが、
厚生年金に加入すると将来の年金受給額も大きく変わりますし、
出産手当金や傷病手当金などの受給できる権利も得られます。
「少し損した気がするけど、保障は厚くなる」とも考えられるかも?

110万円の壁:住民税が発生

パート収入が110万円を超えると、ちょっとだけ住民税が発生するよ

とはいえ数千円程度の話なので、ここはあまり神経質にならなくても大丈夫。
「壁」というよりは「ちょっとした段差」くらいのイメージです。

以前まで自治体によって100万円前後で住民税が発生したと思いますが、
給与所得控除の下限が10万アップ(55万⇒65万)になったので、この壁が10万円上がっています。

123万円の壁:高校生の扶養控除

高校生がこれ以上働くと、親の税金が増えるよ

ここが関係してくるのは、扶養のうち、配偶者&大学生(19歳以上23歳未満)以外の方です。

よくあるケースは18歳以上の高校生の子どもがアルバイトで123万円以上稼ぐと、
親の「扶養控除」(控除額38万)から外れてしまいます。
お父さんやお母さんの所得税・住民税が少し増える、という感じですね。
子どものアルバイト代が上がる時期や年末には、世帯で一度チェックしておくと安心です。

また、ひとり親控除の控除を受けるための要件として
 ・子の年収が123万円以下
 ・親の所得が500万円以下(給与収入なら670万円程度)
というのがあります。このラインも、意識しておくとよいでしょう。

130万円の壁:社会保険の扶養を外れるライン

影響大!!!ほかの壁は忘れても、この壁だけは忘れるな!!

いちばん重要なのがこの130万円の壁です。
年収が130万円を超えると、配偶者(多くは夫)の社会保険の扶養から外れ、
自分で国保・国民年金に加入する必要があります。
(ちなみに、60歳以上または障がい者の場合は130万ではなく180万未満です)

この130万円のラインはは、106万の壁と異なり、
基本給だけなく、通勤手当・家族手当・賞与・事業収入(不動産収入)などすべての収入を含みます。
また、自営業の場合は、青色申告控除額(65万)や間接経費を控除する前の利益(いわゆる粗利益)が判定基準になるケースが多いです。

扶養を外れて国保・国民年金に加入した場合
年間で少なくとも30~40万円前後の負担になるため、この壁は強く意識しておきたいところです。

他の壁は多少超えてもそこまで大きな影響はありませんが、
この「130万円の壁」だけは絶対に忘れないようにしましょう。

150万円の壁:大学生の年収の壁

大学生が働くのは実質ここまでだよ

19歳から23歳の子供がアルバイトで150万円を超えると、親の「特定扶養控除」が減り始めます。
なお、年齢はその年の12月31日時点でカウントします。

また、学生自身も親の社会保険上の扶養から外れて自身で国民健康保険に加入する必要があります。

大学生の方は、自分の所得だけでなく、親の税金にも影響があることを知っておくと良いですね。
特に年末にアルバイト代が増えるタイミングは注意です。

160万円の壁①:所得税の壁

160万円を超えるとすこーし所得税がかかるよ

今回の改正の目玉ですね。
以前の103万の壁が160万の壁に引き上げられたことですね。
ただ厳密に言うと、社会保険料控除などがあるので、実質的な収入の壁はもう少し高いかと。
この壁を「超えた部分にだけ」税金がかかるので、それほど収入が目減りするわけではありません。

この160万円の壁の内訳は基礎控除95万円+給与所得控除55万円のことです。

160万円の壁②:配偶者特別控除の減額開始

160万円を超えると配偶者の税金が少しずつ増えるよ

配偶者(例えば妻)の年収が160万円を超えると、夫の「配偶者特別控除」が少しずつ減っていきます。
201万円を超えると完全になくなるため、少しずつ夫の税金が増えるイメージです。

以前はこの配偶者特別控除の壁は150万円でしたが、それが10万円上限があがりました。

ちなみに160万円の壁を越えても控除額は段階的に減っていくので、
手取りの逆転現象(稼ぐほど手取りが減る)がおきることは通常ありません。
この壁は過度に意識する必要はないかと。

ちなみにこの配偶者特別控除というのは、
夫の給与年収が1,195万円の場合にのみ適用される控除なので、
そもそも夫の収入がそれより高い場合は、この壁は全く影響ありません。

税理士 なかがわまみのひとことアドバイス

いわゆる「年収の壁」は複数ありますが、注意すべき度合いはそれぞれ異なります。
特に130万円の壁は、扶養を外れて社会保険料を自分で負担するため、
手取りが一気に減るという点で大きなインパクトがあります。

一方で、110万・123万・150万・160万円の壁は、
超えた分に対して税金がかかる、または控除額が段階的に減っていくなど
ゆるやかな影響にとどまります。



「壁を越えたら損」と思い込みすぎず、
家計全体でバランスを見ながら働き方を考えることが大切です。

「働きすぎて損する」と言われがちですが、
実際は手取りが少し変わるだけというケースがほとんどです。
逆に「壁を意識しすぎて働く時間を減らしてしまう」方が、長期的にはもったいないことも多いです。

もし迷ったときは、「今の働き方が将来の安心につながるか」を一緒に考えてみましょう。

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