合同会社で役員賞与を出す前に確認したい3つの落とし穴

――2025年2月の国税庁の文書回答について税理士がわかりやすく解説――

「合同会社なら設立コストが安いし手続きもラク」
──ということで、合同会社を設立されている方が増えている一方、役員賞与(事前確定届出給与)については、株式会社よりも高いハードルがあります。
特に 定款に“3つの内容”を盛り込まないと損金算入が認められず、賞与を経費にできない 可能性があります。
東京国税局が今年2月に公表した文書回答でも、届出期限を含む厳格な要件が示されました。
今日は税理士の立場から、トラブルを防ぐポイントをわかりやすくまとめます。

1.なぜ合同会社の役員賞与はハードルが高いのか

そもそも、業務執行社員の報酬は原則無償扱いで、報酬や賞与を支払う場合は、 あらかじめ定款で明示 する必要があります。

それに加え、合同会社は株式会社と違って「総会」という法的機関もなく、「業務執行社員の任期」もありません(株式会社の場合、取締役の任期は最長10年で、必ず定款で任期定めます)。

一般的な合同会社の定款では、社員総会や任期が定款で定めていないケースが大多数です。
結果として役員賞与(事前確定届出給与)を支給するうえで非常に重要な前提である「業務執行期間」が明確になっていないため、事前確定届出給与の取り扱いがこれまで曖昧でした。

今回の国税局の文章回答では、定款で任期や社員総会を定めていることが前提になっているので、役員賞与(事前確定届出給与)を出す場合には、あらかじめ定款にそれらの内容を定めておく必要があります。

2.定款に必ず入れておきたい3つの内容

盛り込むべき内容理由実務メモ
① 業務執行社員ごとの任期任期がないと「職務執行期間」が決まらず、役員賞与の前提が成立しない10年など長めでも可
社員総会の設置株式会社同様、定時社員総会が職務執行開始日であることを明確にするため決算後の定時社員総会で、役員給与や賞与を決定する
報酬・賞与支給の根拠原則無償(準委任契約)なので、報酬を支払うことを明記金額は定款に盛り込まず、「総社員の同意で決定」などと記載でOK

特に、①任期と②定時社員総会の記載は、一般的な合同会社の定款には記載されないケースが多いため、司法書士・行政書士に依頼して定款を作成するのが安全です。

3.税務署への届出期限は「定時社員総会の開催日+1か月」が基本

東京国税局の文書回答は、定時社員総会を「株主総会等」に準ずるものと位置づけ、その開催日を職務執行開始日とみなすと示しました。
したがって届出書の提出期限は「総会開催日から1か月以内」または「期首から4か月以内」の早い方になります。

4.よくある質問

Q. 定款に総会を設けず、総社員の書面同意だけで賞与を決めても大丈夫?

確かにこれまで実務的には、社員の書面同意(同意書)で賞与を決めることが一般的でした。
ただ、今回の国税局の照会でも、合同会社では任期や社員総会の定めがない場合、職務執行開始の日が明らかでないことが論点になっています。
最終的に税務署判断になりますが、やはり定款を整備しておくほうが良いと思われます。

Q. 既に1期目期が始まっているが、今から賞与を検討できる?

定款変更・総会決議・届出書提出を期首4か月以内に完了できれば可能。ただし実務的にはスケジュールがタイトなので、翌期からの導入をおすすめします。

5.まとめ

  1. 定款に①任期、②社員総会、③報酬支給の規定がなければ賞与は経費にならない可能性がある
  2. 税務署への届出期限は、原則総会開催日+1か月以内

※参考 2025年2月東京国税局が回答した事例はこちらです
 →照会内容 こちら
 →回答内容 こちら(照会者の求める見解どおりである旨回答されています)

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